再⽣医療

Regenerative

再⽣医療

再⽣医療は、病気や障害などで失われた⼈体組織とその機能を組織再建により回復させる治療法です。⾼齢化が進む中で、従来、根治治療が難しいとされていた慢性疾患が増え、その治癒が待たれています。⻭科医療においても、再⽣医療は⻭周組織の再⽣が広く⾏われており、今後⼤きな発展が期待されています。

幹細胞培養上清

⻭科における再⽣医療は⾃家の幹細胞や多⾎⼩板⾎漿を⽤いた治療が進められていますが、近年、幹細胞培養上清を使⽤した治療が注⽬を集めています。幹細胞培養上清とは、幹細胞を培養する過程で⽣成された上澄み液で、細胞の⽣存、成⻑、分裂、分化などの⽣物的なプロセスを制御する物質であるグロースファクターやエクソソームを多く含有しています。この⽣理活性物質は、細胞増殖の促進や形成誘導、⾎管新⽣、神経保護作⽤に関わっているため、⻭茎や⻭槽⾻など⻭周祖機器の再⽣の効果が確認されています。
幹細胞培養上清治療は、幹細胞や多⾎⼩板⾎漿の第⼆種、第三種再⽣医療と⽐べると、より安価であるにもかかわらず同等の効果が期待できるのが⼤きな特徴です。

症例紹介

当院では、インプラント治療において⾻量が不⾜している場合に⾏うGBR(⾻誘導再⽣法)に幹細胞培養上清を使⽤しています。

症例1抜⻭即時インプラントオペレーション症例

87歳男性

抜⻭したのは左上1番。プロービング検査すると唇側側の⾻がかなり深く吸収されており、抜⻭即時インプラントと同時にGBRを⾏いました。

デコルチケーション
インプラント体表⾯に上清液を塗布
インプラント埋⼊
上清液を浸した⾻補填材を詰めた
上清液を注⼊
吸収性メンブレンに上清液を浸み込ませる
フラップの間にメンブレンを設置
縫合

術後2ヵ⽉、⾓化⻭⾁の付着状況と成熟を確認できました。

術前⼝腔内写真唇側⾯観
術前のCBCT画像
術後2ヵ⽉⼝腔内写真唇側⾯観
術後2ヵ⽉のCBCT画像

症例2抜⻭窩治癒不全症例

54歳⼥性

1年ほど前に右下7番を抜⻭したが、治癒がよくなく⾻⽋損が⽣じていました。⾻⽋損状況をプロービングにて確認すると、プロービングデプスが12㎜ありました。
⾻再⽣完了後インプラント治療を予定しているため、⾻補填材と吸収性メンブレンを⽤いGBRを⾏いました。

⻭⾁剥離掻爬
デコルチケーション
掻爬・デコルチ完了
⾻補塡材に上清液を混和
抜⻭窩に⾻補填材
吸収性メンブレンに培養上清を浸す
抜⻭窩に培養上清を注⼊
メンブレンで⾁芽の侵⼊を防ぎ縫合
術前のCBCT画像
術後直後のCBCT画像

症例3埋伏⻭抜⻭後GBR症例

71歳⼥性

左上4番から右上3番相当の⽋損部にインプラントリハビリテーションを予定しましたが、⽔平的⾻吸収が⾼度に進⾏しているためGBRを計画しました。⿐⼝蓋神経付近にある完全埋伏の過剰⻭を取り除く必要があったため、その⾻⽋損部にも併せてGBRを施すことにしました。

⿐⼝蓋神経を掻爬して過剰⻭を取り除くと、唇側から⼝蓋側に通じる⼤きな⾻⽋損が⽣じていました。そこで、⾻再⽣スペース確保の⽬的で、チタンでサポートされている強度の⾼い⾮吸収性メンブレンをトリミングして⾻⽋損部をカバーし、⾻補填材に上清液を浸み込ませ、抜⻭により⾻⽋損した箇所と前⻭部に充填しました。⾮吸収性メンブレンを設置し、ナイロン⽷で縫合しました。

術後2ヵ⽉⻭周組織の治癒は極めて良好で、発⾚や腫脹、排膿などの炎症症状はなく、⾮吸収性メンブレンの早期露出などもありません。

⻭⾁剥離掻爬
⿐⼝蓋神経を搔爬
過剰⻭を取り除く
過剰⻭を取り除く
デコルチケーション
⾮吸収性で⾻⽋損部をカバー
⾻補塡材に上清液を混和
⾻⽋損部に⾻補塡材を充塡
⾮吸収性メンブレンを設置
縫合
術前のCBCT画像
術後直後のCBCT画像

幹細胞培養上清治療について

治療内容

インプラント治療において⾻量が不⾜している場合に⾏うGBR(⾻誘導再⽣法)に幹細胞培養上清を使⽤します。
インプラントの埋⼊については別途外科⼿術が必要となります。

リスク

幹細胞培養上清は⼗分な検査を⾏い、安全性に最⼤限に配慮して製造されていますが、現状では研究⽤試薬に該当するため、未知の副反応や⻑期使⽤における影響が⼗分に検討されていません。
また、ヒト組織を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することはできません。

副作⽤

頻度や程度は不明ですが、局所や全⾝のアレルギー反応などが⽣じる可能性があります。
アレルギー反応などは事前に予測することが困難なため、使⽤中に違和感(掻痒感、発疹、呼吸困難感、頭痛、胸痛、腹痛、筋⾁痛など)を感じた場合は、スタッフへ申告してください。
速やかに治療を中⽌し、医師により適切な診察と治療を⾏います。

未承認医薬品等

当院で⾏う幹細胞培養上清の使⽤は、医薬品医療機器等法において国内で承認されておりません。

国内の承認医薬品等の有無

⽇本国内において幹細胞培養上清で承認されている医薬品はありません。

⼊⼿経路

当院で使⽤している幹細胞培養上清は厚⽣労働省で定められた運⽤規定に則った管理を⾏っている⽇本国内ラボ内で製造・保管された製品で、株式会社トータルヘルスコンサルティングより仕⼊れています。

諸外国における安全性等に係る情報

諸外国において承認されている医薬品はありませんが、重⼤なリスクの可能性について明らかな情報はありません。